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日本の沿岸に自生する一年生の大型褐藻類
分類 褐藻網コンブ目 ネコアシコンブ科 カジメ属
アントクメは、本州中部以南の太平洋沿岸や日本海沿岸、四国・九州などの潮下帯の岩場に生育します。また、他のコンブ目海藻類が分布していない鹿児島県いちき串木野市に生育していることが知られており、日本沿岸において最も水温が高い海域にも生育しています。
春から初夏にかけて成長し、夏にはその一生を終えます。
葉は笹の葉のような形をしており、縁には細かいギザギザ(鋸歯)が見られます。中助(葉の中央の太い筋)はなく、表面には波打つようなシワや白い斑点があらわれることもあります。
アントクメは、地域によっては『シワメ』『トントンメ』といった愛称で呼ばれ、食用としても利用されています。特に伊豆地方では春の味覚として、みそ汁や酢の物、煮物などに使われます。
栽培漁業センターのある大島では『ヒロメ』といった愛称で親しまれ、若い葉をワカメやメカブのように刻んで食用にしています。
かつては『アントクメ属(Eckloniopsis)』に分類されていましたが、近年の研究により『カジメ属(Ecklonia)』に再分類されました。見た目は似ていても、遺伝的にはカジメ(Eckionia cava)とは異なることが明らかになっています。
このように、アントクメは自然科学の視点からも注目される存在であり、海洋生態系の多様性を知る手がかりにもなっています。