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野菜編(4)の概要

印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示 ページID:0057752 更新日:2022年11月30日

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野菜編(4)

 茎葉菜類の漬菜(つけな)、キャベツ、カリフラワーの細密画から当時の府立農事試験場の試験研究を探ります。

 東京府における大正中期から昭和初期にかけての漬菜の生産事情は、ダイコン、サトイモに次いで作付面積が大きい野菜でした。漬菜は漬物としての消費が多く、単位収量は全国1位(図1)を誇ったこともありました。主産地は南葛飾郡に続き荏原郡、南足立郡、豊多摩郡でした。品種は、結球しない「山東菜(さんとうさい)」、「唐人菜(からひとな)」や「不見菜(みずな)」なども多少栽培されていましたが、「包頭蓮(ほうとうれん)」など結球する結球白菜と呼ばれるハクサイに徐々に変わりました。キャベツは南葛飾郡、南足立郡で最も多く栽培されていました。品種は早生の「中野早生(なかのわせ)」、「アーリエスト」や晩生の「サクセッション」が栽培の中心でした。カリフラワーは、西洋野菜として大正期頃より栽培されるようになりましたが、その栽培面積は小さいものでした。

 今回ご紹介する細密画の漬菜は12品種12点、キャベツは5品種5点、カリフラワーは2品種2点が残されています。

 漬菜は南葛飾郡金町にあった農事試験場第二分場<外部リンク>において明治36(1903)年より大正6(1917)年まで収量の比較試験が行われ、大正2(1913)年からは本場においても比較試験が始められました。昭和期までの試験期間に、80以上もの品種が取扱われました。大正初期まで「三河島菜(みかわしまな)」や「曲金菜(まがりかねな)」、「体菜(たいさい)」などの結球しない漬菜が試験栽培の中心でしたが、それ以降は「結球山東菜(けっきゅうさんとうさい)」や「芝罘白菜(ちーふーはくさい)」、「直隷白菜(ちょくれいはくさい)」などの結球白菜が試験の中心に変わりました。ハクサイの栽培は面積が大きいので多くの種子を必要としました。日本では純度の高い多くの種子を採る採種技術がなかったので、これら種子の供給は輸入元の中国に大きく頼っていました。農事試験場は、自家採種や大規模採種に必要な採種場の選定方法および原種々子のつくり方などを確立し技術指導を行っていました。キャベツもハクサイと同様に第二分場において明治37(1904)年より大正8(1919)年までの長期間にわたって収量の比較試験が行われ、大正2(1913)年には収量と品質の面から「中野早生」や「サクセッション」などが優良品種に選定され、早期採りに向いた品種として早生の中でも早い「アーリエスト」などが選定されました(図2)。

 キャベツは秋まき春採りの作型をとり、秋期の苗つくりが収量に及ぼす影響が検討されました。本葉が4枚展開した生育段階の「サクセッション」の細密画が残されています。移植段階に達したキャベツ苗の生育状態がわかる細密画で、技術指導などに重宝する資料として使われました。大正中期以降、試験は本場に引継がれ、その間90を超える品種について試験が行われました。

 カリフラワーの試験は、大正4(1915)年より「マグナムボナム」や「ピュリティー」などの品種を使い収量比較の試験が始められ、21品種が比較されました。カリフラワーもキャベツ同様に苗つくりの試験が行われ、移植苗の「ピュリティー」の細密画が残されています。

表紙      キャベツ
図1 東京府の最近の10aあたり漬菜収量が全国1位である         図2 最も優良な甘藍の二品種の写真.
  ことを示す統計図.                           本文記事には、早期採りの品種として「アーリエスト」、
   地図の緑塗りつぶし枠部分が東京府で、左凡例に800貫          晩生品種として府内栽培面積が大きい「サクセッション」
  (3,000kg)以上と示される。                     が紹介される。
   出典は、園芸之友.大正5年10月号.最近漬菜反當収量             出典は、園芸之友.大正4年4月号.
  比較.  

引用・参考資料

・東京府.東京府の産業(農業)其一園芸.昭和4年.p30-33,40-43.

・東京府立農事試験場.農事試験成績略報:第一から第十六まで.

・東京府立農事試験場.業務功程:大正3から15年度まで, 昭和2から19年度まで.

・東京府立農事試験場.結球白菜採種法(一).東京府農会報.昭和4年1月号.p21-23.

・鈴木孝太.甘藍の良種に就いて.園芸之友.大正4年4月号.p61-62.

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