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野菜編(7)の概要

印刷ページ表示 大きな文字で印刷ページ表示 ページID:0068527 更新日:2023年10月5日

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野菜編(7)

 府立農事試験場では、根菜類のサツマイモとサトイモ、ジャガイモの試験研究は設立当時より昭和18・19年までの長期間にわたり行われてきました。

 東京府における大正後期から昭和初期にかけてのサツマイモ、サトイモ、ジャガイモの生産事情をみると、サツマイモはコメ、ムギに次いで作付面積が大きく需要の多い野菜でした。南葛飾郡と南足立郡を除く各郡において広く栽培されていましたが、産地は徐々に三多摩郡(西多摩、北多摩、南多摩)に移っていきました。サトイモはサツマイモに次ぎ作付面積が大きく、主産地は北多摩郡、荏原郡、北豊島郡でした。荏原郡では「八ツ頭(やつがしら)」や「團子(だんご)」、「縞芋(しまいも)」のほか「土垂(どだれ)」などが栽培されていました。ジャガイモの主産地は荏原郡ほか北豊島郡、豊多摩郡、北多摩郡でした。品種は、「アーリーローズ」ほか「早生白(わせしろ)」、「赤芽(あかめ)」などが栽培され、早生種を使った夏秋の2期作が行われていました。

 今回ご紹介する細密画は、サツマイモとサトイモ、ジャガイモの一部です。サツマイモの細密画は37品種50点、サトイモは32品種25点、ジャガイモは22品種18点が残されています。

 サツマイモ品種の「琉球」、「鹿児島」、「シカゴ」、「四十日」、「川越」は、府立農事試験場設立頃より試験栽培され昭和18(1943)年まで収量比較が行われてきました。また、挿苗(そうびょう)(苗の植え)時期や挿苗法(苗の植え方)*などの栽培管理法の試験も行われ(写真1)、大正15(1926)年には「金時」の系統育種もはじめられました。サツマイモ育種は、他の地方農事試験場でも進められて昭和10(1935)年頃から「紅赤埼玉一号」や「沖縄100号」、「農林二号」、「関東五号・六号・七号」などの地方品種が比較試験に扱われるようになりました。サツマイモの試験が始められてから昭和18(1943)年までの間に100近くの品種(あるいは系統)が試験栽培されました。また、サツマイモはアルコール原料としても重視され、昭和13(1938)年より16(1941)年までの4年間に63もの品種(あるいは系統)について品種選抜試験が行われました。この試験では挿苗期や挿苗法などの基本的な栽培管理試験のほかに、成長ホルモンによる生育促進や増収効果試験も行われ、当時はアルコール原料としてのサツマイモが大変重要な品目であったことがうかがえます。*:サツマイモ苗の植え方には、水平植え(苗を畝の上面から底面の中ほどに水平に植付ける)、舟底植え(中ほどに船底のように弓なりに植える)、釣針植え(中ほどに釣針のように植える)、斜め植え(畝の上面中央から斜めに刺すように植える)、直立植え(畝の上面中央から垂直に植える)の4つの植え方がある。

 サトイモ品種は「早生芋」、「土垂」、「豊後(ぶんご)」、「島芋」、「唐(とう)ノ芋」、「女芋」が明治37(1904)年より継続して試験栽培されてきた主要品種でした。サトイモの試験は、昭和19(1944)年まで品種比較のほかに肥料、植付け時の深さや収穫時期が収量に及ぼす影響について行われてきました。その間に栽培された品種数は30品種でした。

 ジャガイモ品種は「アーリーローズ」、「アメリカンウオンダー」が試験場設立から昭和14(1939)年まで試験栽培されてきました。その他に「サーオールターラレー」、「シカゴマーケット」などが明治後期より大正13(1924)年まで試験栽培され、それ以降は国内で育成された「岩手一号」とその後継品種や「男爵(だんしゃく)」、「メークイン」が扱われました。ジャガイモの試験は、品種比較を中心に行われてきましたが、その他に芽数を調整することが収量に及ぼす除茎(じょけい)法試験、種イモの大小が収量に及ぼす種イモ比較試験が行われました。その間80品種程度が試験栽培されました。

サツマイモ植付法

写真1 第一分場で実施されたサツマイモ苗の挿苗法が収量に及ぼす試験結果(農事試験場成績略報第八より抜粋)

上)當場法(釣針植え)、下)在来法(斜め植え)

品種「川越」の3ヵ年(明治35、36、37年)平均反あたり収量:當場法収量1,313kg、在来法収量1,238kg

引用・参考資料

・東京府.東京府の産業(農業)其一園芸.昭和4年.p12-20.

・東京府立農事試験場.農事試験成績略報:第一から第十六まで.

・東京都立農事試験場.業務功程:大正2から昭和19年度まで.

・財団法人日本農業研究所編.戦後農業技術発達史3.畑作編.昭和45年.p459-460.

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